numero99
2005年11月末
イタリアに研修旅行に行かせていただいた。
会社が旅費や食費を全て負担してくれるという何ともごきげんな(研修)旅行。
とはいえ「自分の力で掴み取った結果」があっての参加資格だ。
全8店舗全てのスタッフにも胸を張って行ける。
自分にとって大きなターニングポイントになるであろう想像はついていた初めての渡伊。
人生を大きく変えた旅になったことは言うまでもない。
当時25歳。
初の海外旅行がイタリア。
自分の他に表参道店の店長を引率とし、下北沢店の先輩を含めた男3名、個人手配の旅。
これまでアシスタントの頃から技術練習やテストなどで講師として教わってきた先輩二人だ。
もちろん一緒に旅をするような仲ではなかったし、年下の自分はリラックスなど出来るわけなどない。
しかも協調性に乏しく、旅では単独行動を取りたい衝動に駆られてしまう自分には、
正直、なかなかしんどい旅になりそうな予感がしていたが、
結果的にははそんなことさえ気にならない程に最高の研修旅行となった。
成田からアリタリア航空の直行便でミラノ・マルペンサ空港へ飛ぶ。
*現在は廃路線だが当時は成田~ミラノの直行便が存在していた。
13時間の空の旅だ。
羽田~南紀白浜間の小さなジェット機は何度も経験していたが、ジャンボジェット機は初。
その快適さに驚きながらも、年上の先輩二人に挟まれて過ごすエコノミークラスの窮屈な時間は、
正直言って苦痛でしかなかった。
しかし、ミラノの空港に降り立った時に入ってきた何とも表現出来ない「イタリアの匂い」が、
機内での煩わしさの中で溜まったストレスを吹き飛ばしてくれた。
大袈裟で思い込みだろうが、それはまるで遺伝子に残る記憶に触れたようだった。
そしてその瞬間、
人生の歯車が噛み合った音を聞いた。
その日の内に乗り継ぎ、フィレンツェ・ペレトーラ空港へ向かう。
しかし空港周辺の濃霧の為に搭乗手続きが何時になっても始まらない。
仕方がないので空港内で休憩を取ることにしたのだが、先輩二人も疲れていたのだろう。寝ている。
自分も少し眠ろうかとも考えたが、イタリアの地に辿り着いて早速の一人時間だ。
この貴重ない自分時間を有意義に使いたい、そう考え
「バールに入って一人でエスプレッソを飲もう」と空港内のバールへ向かった。
ここで洗礼を受けることになる。
この日の為に頑張って覚えたイタリア語を披露しようと、
バールのカウンターでイタリア人の綺麗な女性に向かって
「uno cafe per favore 」(エスプレッソを一つお願いします)と、
意気揚々と笑顔で話しかける。
店員の女性、
「ん?何言ってんだこの東洋人?」といった顔でこちらを見て静止している。
(アレ、、、何か間違えたかな??)と思った次の瞬間。
ドン!
とカウンターに置かれたのは、
ミネラルウォーター・・・
「そうそうこれな、この透明などんな時でも飲める万能飲料的な、、、てなんでやね~ん!」
とはもちろん言えず、
何事もなかったように支払って、意気消沈して戻る。
もちろん先輩たちにも「水買ってきたんです」としか言えない。
しっかり発音したはずなのに、何故に水が、、、
このミネラルウォーター事件の真相は帰国後に分かることになる。
退屈で窮屈で色々な意味で疲労困ぱいとなった空港待機も、ようやく搭乗手続きが始まる。
さあ、いよいよ花の都へ向けて再フライトだ。
本来であれば約2時間で乗り継げる飛行機に、約6時間遅れで搭乗。
現地時間22時30時分頃、霧のミラノを飛び立つ。
向かうはフィレンツェ。
ずっと憧れていた地へ。
つづく
濃霧のミラノ・マルペンサ空港
ミラノ・マルペンサ空港内で待機時間
髪が長い
若いですね・・・